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07. 03. 22

ある意味、、。

さっき仕事から帰ってきたら、入り口の階段のところで、小学生、それも
3年か4年くらいの、まだかわいらしさと幼さが十分に残っていそな
男の子と女の子が二人、階段をおりてきながら、話をしていた。
入り口のところに子ども用に形を小さくしたマウンテンバイク、っぽい自転車が
停めてあった。多分その男の子のだろう。

女の子が言った。
「○○くんの自転車、いいよね。」って。

そうしたら、その男の子が答えたのだけど、その答えを聞いて
俺は、驚愕ししてしまった。
「この自転車なんかいかんわ。変速ギアついてないし、ある意味、壊れてるのと同じやし。」
「ある意味壊れているのと同じやし、、」その言葉を聞いて、俺は、思わずその言った
男の子の顔を見た。あどけなさそうな、のんびりした小学3年か4年生の男の子。
遣った言葉が「ある意味」だって。
「ある意味」、なんていう言葉、普通の小学生の日常的な語彙に入っているのだろうか?
普通に今どきの小学生が遣う言葉の中に「ある意味」なんていう言葉が
入っているのだろうか?
まぁ彼の言葉の遣いかた、本来の遣いかたとは微妙にずれてたので、多分
どこかで聞きかじってきた言葉で話したのかな、 っていう気はしたけど。
でもさ、「ある意味」だってさ。
おれ、しょうがっこうのときって、そんなむずかしいことばなんてしらんかったぞ。
このブログを読んでくださっているみなさん、あなた日常生活の中で
「ある意味」なんて言葉遣ったりする?


それで思い出したのだけど、
中学の2年の時かな。
クラスにワダくん、という子がいてね。
こいつ 彼が、授業中先生にあてられて、「ワダくん、あなたはAかBか
どちらだと思う?」 って聞かれたの。

ワダくんは立ち上がって「僕は、強いて言えば、Bだと思います。」とお答えになった。
「しいていえば、だってよ、、。」って内心俺思ったけど、ワダくんは、お勉強ができて
なおかつ、ちょっと変わっている人というクラスの共通認識があったので、
「強いて言えば、、。」って「まぁ、なんてコムツカシイ言葉を、、」とは思ったけど、
一方で彼ならそんな言うだろうよ、ということもありはした。
その子、小学生で、どこからそんな言葉仕入れてきたのだろう?
彼がその言葉を知っている、ということは、彼の身近な周囲の人が
そういう言葉を遣ったからだろうね。それも繰り返して何度も。
それか、彼のお気に入りの映画とかテレビ番組で
登場人物が繰り返して「ある意味」なんていう言葉をセリフで言ったか、かなぁ、、。
謙介は驚いた。
むずかしい言葉だぁぁぁぁ。

だけどむずかしい言葉ってねぇ、、、。俺さ、大学のとき国文学科だったけど、
ゼミの発表でむずかしそうな言葉を遣うとね、
たちまちセンセイから、
「それはどういう意味で遣っているのや? 」
「その言葉の用法合ってるか? 辞書で調べたか? ホンマか?」
って、厳しい指摘がどんどん来た。そうして
最終的にその言葉の意味が分からないで遣った、っていうことが分かったら
「アホ! そんな抽象的で何となくとしか言えない、感覚的な表現なんか
するな。 もっと意味のはっきりした誰でも分かる表現にせえ!」
ってしかられた。

何か三重県が岩手県に抗議するとかしないとか問題になっているらしい。
「美し国」(うましくに)っていう言葉で。
元々三重県が観光宣伝用に使っていた「美し国」っていう言葉を
岩手が最近になって、自分のところの観光用のキャッチ・コピーに
使うようになって、それで三重が、うちが使ってたのに、ということらしい。

「美し国」っていう言葉は、すんごく古い言葉でね。
どこに用例があるか、って言ったら、日本書紀のですねぇ、、
(しかしゲイのブログで日本書紀の話する奴っているのか?笑)
垂仁天皇の25年にあるんだ。話し手は、なんと天照大神さん。
で、こんなふうに言ってる。

 是の神風の伊勢国は、常世の浪の重浪帰する国なり 傍国の
 可怜し国(うましくに)なり、、。

っていう用例があってさ。それで伊勢の国のことを常世からの波が
しきりに打ち寄せる、すばらしい国であるよ、って伊勢のことを褒めている。
だから昨日今日の新しい言葉では決してないんだ。 古さから言ったら
もう天下一品級の古さだよね。(笑)
で、まぁ「書紀」の中で、こういう言葉の遣われかたをしてるから、
三重県のキャッチ・コピーとして「美し国 三重」ということにしたのだろう。

ただね、くせものなのは、この美し国、っていう言葉でさ。
実は万葉集には「大和」を褒めた言葉としても出てくる。
三重の専用じゃないのさ。
むしろ三重の専用は「神風の」っていう枕詞ね。これは「伊勢」にかかる枕詞
だから、伊勢の専用のことばなんだけど。

ホラ、昔は旅って命がけだったから、やっぱり違う土地に行ったりすると
まず、その土地の神様に「どうぞ無事に通らせてください。」っていうお願いをした。
それから、その土地の人は作物が無事に育って、豊作になりますように、
ってやっぱり自分の住む土地の神様にお願いをした。
これを国ボメって言うんだけどね。
そのためには、まず、土地の神様にお世辞を言って、その土地を褒め称えたんだ。
「この国はなんとまぁすんばらしい国ではありますまいか。美しい!」とか言ってゴマをすった。
それがこの「美し国」っていう言葉。だから、これは伊勢の専用の言葉ではない。
かといって大和専用の言葉でもない。
え? 謙介 詳しいねぇ、、って?
そりゃそうです。俺、この「国ボメ」っていうことがテーマで学部の卒論書いたから。(笑)

ね、まぁ一般的な言葉だ、と。
だから岩手県は遣ってもいい、って思った。別に三重専用の言葉じゃないもんね、とか思って。
だけど三重県は、最初にうちが使ってて、三重=美し国、っていうイメージができかけて
いるのに、岩手県め、横取りはずるい、って思った。
それで多分今回の抗議、っていうことになったんだ、って思うけどねぇ、、。
言葉の意味をどう取るか、で、判断がものすごく分かれてくるよね。

ある意味、(笑)微妙な判定になりそうなこの問題。
果たしてどうなりますか。
しばらく追跡していこうと思っているところ。

ちゃんちゃん。

  

(今日聴いた音楽  IT'S ONLY A PAPER MOON 
歌ナット・キング・コール 1992年 東芝EMI盤から)


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