« 卒業証書 | Main | 煮あずき »

07. 02. 13

ボクは素人ですから

京都にいる知り合いのおばさんが
左京区の聖護院にある某大学病院
に入院した。
お見舞いに行きたいけど、体調が思わしくないので
お花のアレンジメントを知っている花屋さんに
頼んで配達してもらった。
で、お礼の電話が今日夕方かかってきた。

そのおばさんは去年肺ガンが見つかって手術をして削除
したのだけど、こないだ脳と骨に転移が発見された、
ということだ。


今のところは病人にしては比較的元気で(変な表現だけど)
最初のお花のお礼の部分こそ、ゆっくりていねいだったが、
「病室の状態はどうですか?」と聞くやいなや、
一気にマシンガンのように俺に話をしてきた。
(おばさん、ホンマに病人かいな、と思うくらい。)


おばさんの部屋は6人部屋らしいのだけど、
真向かいの人は、主治医の先生にものすごく突っ慳貪(つっけんどん)
な対応しかしない、そうな。
実はその人も去年肺ガンが見つかって、ガン細胞はすべて除去して
手術後主治医の先生から、術後の5年生存率は80%以上、
というお墨付きをもらったとか。


その先生がそう言ってくれてから、半年もたたないうちに、
骨にがんの転移が見つかったんだって。
で、ご主人が腹を立てて、「去年の肺ガンの手術・検査の時に
骨のほうは見落としてましたんか?」と詰め寄ったとか。
そうしたらその主治医の先生「ボクは骨は素人ですから、ようわかりません。」
と言ったそうな。
まぁ、その言葉に多少の謙遜はあった、って思いたいけど
病人って、ましてやこの方はがんが再発した、って
言われたわけでしょ。どうしようもない不安の淵に置かれて
いる人間に対して、ボクよう知りませんねん、って言ったら、
どういう心理状態になるか、このお医者さん、ってわかんないのだろうか?

「それで、お向かいのご主人も(患者の)奥さんも怒ってはるのよ。」
とおばさんの言葉。
「大学病院の医者の言いそうなセリフですね。」と、これは俺が言った。


「百の扉」の雑感で去年書いたんだけど、驚くことに京都府って、去年まで
がんの拠点病院がない都道府県だった。
ようやっと去年のがん診療の拠点病院が出来たところ。
本当にようやく、という感じ。
大学病院なんて○立医大病院と○大病院と二つもあるのに、
それでもがんの拠点病院は去年までなかった。

俺ね、今までずーっとがんの拠点病院が京都になかった、っていう
理由がこのお医者さんが言った言葉に象徴されているように思えて仕方がないんだ。

ボクは肝臓専門。ボクは脳専門。だからほかのところのことは、ようわかりません。
そんなことを平気で患者に向かって言うお医者様ばかりなのね。

でもさ、肺ガンの患者さんって、大体半数が脳に転移するんだよ。
52%とかいう確率で、転移する、って、
俺の行ってるがんセンターの待合室に置いてあるパンフレットには書いてあったもの。


肺ガンは胸部外科の担当。 でもがんが脳に転移したら、それは脳のセンセイの担当。
骨に転移したらまた別のセンセイのご担当。 それぞれの臓器によって専門が
変わる。そして、専門外の部分については
ボクは素人なんで専門以外はさっぱり分からない。
ボク知らない、とかおっしゃって、平気で患者さんを放置しているあいだに、
他の部分でがんが出来てるのに気がつかず、気がついたらすでに手遅れ。


人間の身体って、単一の臓器だけから出来てたらいいのにねぇ。○大のセンセイ。
たしかに胸部外科のサイトを見たら立派そうな記述がずらずらと並んではいる。
だけどみなさんご立派なセンセイばかりだから、他の部分に転移したら
その別のご立派なセンセイの専門分野を侵食することになるから
一切口はつぐんでしまう。
なので、患者さんは、例えば肝臓であきれるくらい検査しまくってても、
脳のほうは、はじめてだったら、一から身体全体の検査やり直すんだって。
他の病院へ行った、っていう転院じゃなくて、同じ大学の付属病院の中で。
あほらしいと思わない?
だけどそれが現実。


患者の立場から言わせてもらえば、そんな大学病院なんて
使えない。かかりたくない、って思う。
おばさんのベッドの真向かいの人がお医者さんに突っ慳貪なのも
そりゃそうだ、って思えた。

こんなこと一つ取っても、旧態依然というのか、
いかに患者さんの気持ちに寄り添うような
治療とか医療体制っていうのが出来てないなぁ、って
いうことが分かってくる。


おばさんのマシンガントークの電話を切ってから、
「白い巨塔」の作品のテーマが今も全然古びていない、というのも
分かる気がするな、ってためいきをつきながら思った。

(今日聴いた音楽 真夜中のドア Stay With Me  松原みき 歌
1980年 アルバム ポケット・パーク から キャニオンレコード
大阪、四ツ橋の厚生年金まで聴きに行ったの、昨日のことみたいに
思い出します。もう彼女の新曲は聴けないのが、つくづく残念。)

|

« 卒業証書 | Main | 煮あずき »

心と体」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference ボクは素人ですから:

« 卒業証書 | Main | 煮あずき »