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07. 02. 15

太宰を嫌いだった人、ふたり。

先日から太宰治の作品を何点か読んでいる。

太宰というと、すぐに思い出すのが、
大学の時、国文法を習ったT先生のことだ。
この先生は強烈に太宰のことを嫌っていた。
先生の専門は中古文学。
(中古っていうのは、日本文学史の言い方で、
歴史で言えば、平安朝の文学のこと。)
このセンセイの専門は「狭衣」と「堤中納言」。

平安朝文学だから近現代文学の太宰は授業の中で、出てくるはずは
ない、はずではあった。


ところがですね、このTセンセイと太宰が小学校の同級生だったの。(笑)
講義の合間に、同級生から見た、太宰の小学生時代のことがしばしば登場する、
ということになった、という次第。
で、このセンセイは太宰のことが嫌いで嫌いでたまらなかったらしい。
太宰の悪口になると、もうブレーキが利かなくなる。 もう好き勝手に言う言う。(笑)
講義の最中に「つんすまのつんがるは、つんがるでねぇ!」って一体何度叫んだことか。
「あんなもの書くつんすまは、さいてーだ! 」 とも。
(あ、注釈がいるよね。 太宰の本名は津島修治。なんたってセンセイは同級生だから
本名で呼ぶ。まぁ、センセイの講義を聞かされている学生は、国文科の学生だから、
太宰の本名が津島、っていうことくらいは、みんな普通に知っていた。
それでもって、そのセンセイは津軽弁だったので、「つしま」の発音が
「つんすま」となった、と。)


まぁ、そこまで嫌い嫌い、って叫ばはらへんでもええやないですか、とは
思って、学生たちは聞いていたけどね。
「でもセンセイから見て、同級生であった太宰の中に、
決して許せないものがあって、それであんなふうに叫ばはってたんやろなぁ。」
というあたりでみんな聞いてはいたけどね。
センセイが「津島、、」ってはじめたら、はいはい、ああまたね、っていう感じで
最後のほうなんて辟易してたけど。

それからもう一人、有名な太宰嫌いの人がいる。
三島由紀夫。
この人も太宰嫌いだったんだよね。
新潮文庫に入ってた三島のエッセェ読んだら
「私は太宰の顔が嫌いだ、性格が嫌いだ、、、」と、この人もとにかく
太宰が嫌い嫌い嫌い、って書いてあった。

三島さんの太宰嫌い、っていうのは俺、前にも書いたけど、
近親憎悪、っていう感情じゃなかったか、って思う。
表面上は水と油、というか全然違うタイプのようにも見えるけど
ホントは三島さんは、自分が一つ脱線したら、太宰のように
なってしまう、という恐怖感があったんじゃないかしらん。
太宰みたいな退廃の極致みたいな人間に自分も底のほうで
つながっていて、引っ張られそうな自分っていう存在に
危機感というのか、恐怖感を持っていたんじゃないか、
って思う。


何で危機感を持ったか? ってそりゃあ
太宰の退廃は三島の美学に到底受け入れられないものだったもの。
でも、よほど関係なければ、無視したらいいはずなのに、
三島はそれが無視できなかった。
強烈に忌み嫌った、っていうことは、裏を返せば
それだけ三島さんの中に太宰の存在が関心を惹くもので
あったから、っていうことでしょ。


今日から仕事に復帰。
久しぶりに出勤したら、もう大変。(笑)
お昼、ご飯を食べる時間10分ほど休憩しただけで
ずーっと溜まった仕事していた。

その間に来月で辞める人たちが、何人か
こっそりあいさつに来てくださった。
もうそろそろそんな異動の時期だなぁ、と
あいさつに来てくれた人の顔を見て
改めて気がついた。


(今日聴いた歌 Danny Boy  歌 綾戸智絵 
アルバムLOVE から 2000年

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Comments

 『三島はそれが無視できなかった。』
 三島のそういう「漢らしくない」ところが大嫌いな私です(笑)

 狭衣って救いのない物語ですね・・・好きだけど(笑)

Posted by: Ikuno Hiroshi | 07. 02. 16 at 오전 12:53

------Ikuno Hiroshiさま
三島さんは根底のところで、どうしようもなく女々しかった。
でもそれは、彼にとっては許せない、というか許しがたい
ものだったのでしょう。ありたい自分と、内面をひとかわ剥いたら
そこにある現実の自分のギャップ、っていうのも
相当に大きかったんでしょうね。
「漢らしくない」って、すごくよくわかる表現です。
 狭衣、お好きですか? 俺、学生のときはじめて習って
好かんなぁ、、って思って放擲してしまいました。今もですけど。(笑)
やっぱり物語として救いがない、ということがあったからかも
しれません。

Posted by: 謙介 | 07. 02. 16 at 오전 5:52

 最後,狭衣帝がぼーんやりしてるシーンなど,「お前のせいじゃっ!」と後ろからどついてやりたくなりますね(笑)
 登場人物にツッコミどころ満載なあたりとか,天人が降りてくるなど源氏物語にはないメルヘンチック(笑)なところが物語物語していて,いいかな,と(本当に好きなのか? 笑)。

Posted by: Ikuno Hiroshi | 07. 02. 17 at 오후 10:22

------Ikuno Hiroshiさま
 あははは。実は同じことを思いました。
講読の授業でここやってて、最後にみんなで感想を言い合ったの
ですが、「どついたろかしらん。」っていう感想の人
俺も含めて15人の授業で4人いましたもの。(笑)
 それから、ここにも書いておりますが
この中古文学のTセンセイ、何せ津軽のご出身ですから
狭衣も源氏も津軽弁で読まはったのには閉口しました。
「いんずりの おおんときにくぁ にょうご かうい、あまーた
さんぶらいぃ、けえるなかにぃ、、」って、
最初聞いたとき、源氏の冒頭部だとは夢にも思わなかった、
いや思えなかったです。(でも人間適応できるもので
1年間講義をうけたら、大体津軽弁のお話が分かるように
なったでなす。笑)

Posted by: 謙介 | 07. 02. 17 at 오후 11:02

 津軽弁で朗読する源氏物語・・・なんだか味わい深いような(微笑)
 きちんとスタジオ録音てCD化したら,意外に売れたりして(笑)

Posted by: Ikuno Hiroshi | 07. 02. 18 at 오후 8:58

-----Ikuno Hiroshi さま
二回生の4月、そのTセンセイが教室にやってきて、いきなり
源氏の冒頭を諳んじて、講義をはじめたときは、
ウチュウジンの言葉かと思いましたですよ。
それから、講義の合間に学生に質問するわけですが
「ハイ、ここさ品詞(すんす)は?」とご下問があって、
例えば「助動詞です。」って答えて合ってたら
「んだんだ。」って。
しかし1年という歳月は、こんな俺でも「順化」させてくれました。(笑)

Posted by: 謙介 | 07. 02. 19 at 오후 7:58

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