文系VS理工系
実は職場で今日ちょっとしたいざこざがあった。
その原因というのは本のこと。
今年度末で退職する人がいて
その中で貴重なラテン語・ドイツ語の本を寄贈する、
ということになったのだけど、その話を受けてきた人は
情報関係が専門の人だった。理工学系が専門の人間にとってみれば
文献なんて消耗品だから、「場ふさぎで面倒」としか思わなかったのだろう。
「そりゃどうも」という程度か、
ことによるともっとはっきり「そんな本迷惑やなぁ。」という
表情をしていたのかもしれない。
でも文化系の学問の人は、そういう原書っていうと、
まず第一次の資料、ということで、すごく大切にする。
今のところ、日本に数冊しかない本、となると、それはすごい!
ということになって、もちろん扱いだって全然違う。
そういう貴重な本を「そりゃどうも。フン!」ってあしらわれたものだから
あしらわれた方は怒髪天を突く勢いで烈火のごとく怒った。
「××さん、相手が悪かったのよ。謙介を窓口にしたらよかったのに。」
と同僚Bさんが言ったけど後の祭りで。
結局俺が行って、その退職する人の話を聞いて、気分を直して
もらった。この人も京都の出身なので、最後は京都の本屋さんの
話になって、「ちょっと言い過ぎたなぁ。堪忍やで。」で言って
もらえるところまで何とかご機嫌を直してもらったのだけど。
文化系の人間って、研究対象がさかのぼる、ってことが多いから
古い資料がどうしても必要、っていうことになって、
その結果、記録をどうやって残すか、という話になる。
となったときに困るのが、本のデジタルメディアへの保存
なんだよね。
5年くらい前に日本国語大辞典の第2版が出たんだけど
それは図書版だけで、CD-ROMっていうような
電子辞書体のバージョンは作られなかった。
というのも、CD-ROMの寿命ってさ
一番短く見積もって精々10年くらいしかないもの。
DVDやCDっていうのは保存状態によるけど、
10年から30年だもんね。
前にCDを研究している、それこそ理工学系の人に聞いたら、CDの表面に
印刷されたレーベルの文字のインクなんかが長年の間に
裏面に染み出してしまうことになるんだって。
その裏に染み出したインクがレーザー光線を当てて
情報を読み取ることの邪魔をするようになって
ちゃんと再生できなくなる。もしくはCDの盤って
何層かが重なってできているけど、その層が剥離して
盤が壊れてしまう、ということも起きる。そういう訳で
電子資料なんて、保存方法によったら10年すら
怪しいことだってある。
そんなこと言わなくたってさ、デジカメの記憶カードに入っていた
撮影したデータが、磁石を含む何かと知らないあいだに接触していたせいで、
気がつかないあいだにすっかり消えてしまっていた、なんて失敗だってあるしさ。
ある日突然PCが立ち上がらなくなってバックアップを
取っていなかったために、溜めこんでいたイケメン
画像が全部パァ、、、なんてよくありすぎる話で。(笑)
紙が中性紙で100年は持つのに、デジタル資料って30年程度しか
持たない。
だからどんどん更新していくような消耗的な記録であれば
それでいいのだけど、永年にわたって残しておかなければ
ならない記録というのは、やっぱり資料の電子化っていうのは
恐い。紙で残しておいたほうがいいよね、っていう
話になった。
これが文学なんかと理工学の資料の扱いの差なんだろうね。
理工学ってデータとか情報ってどんどん入れ替わるよね。
古いものは価値がないから、ってどんどん消去したり
外していったり。その入れ替わりの速度はホントに日進月歩。
ちょっと前はこうだった、って言ったって、今は違うよ、なんて
よくあることだよね。
ところが人文科学の研究って、古いものが研究対象になることが多いし、
過去の研究の積み重ね、っていうことを周囲も要求してくるから
研究されたものは、すべて蓄積して置いておかなければならない。
前のデータは更新したのでもうありません、とか、消してしまいました、じゃ
話になんない。 そんなことやってたら、
指導教官に「○ホ! きちんと過去の研究史の整理をしてきちんと
自分なりにまとめてこい!」なんて普通に言われるし。(笑)
だから当然資料の保存っていうことが気にかかる。
最近の媒体では全然長持ちしない。それでやっぱり紙かなぁ、、っていう
ことになるのだけど、
ところが紙っていっても、また問題で。
洋紙は中性紙みたいなものでも多分よく保存できて
100年くらいのものだろうか。
和紙だったら、いい紙を使うと1000年くらいは
もってくれるから
やっぱり保存ということで言えば、昔ながらの和紙ですかね、
ということになった。
「記録を残す、っていうことでその保存の媒体、っていうのを
考えたら、今の技術ではまだ、安心して保存を任せられるような
媒体ってないんだ、っていうことなのかしら。」と同僚が言って
話はそこで終わった。
話は変わって。
昼、いつもはお弁当なのだけど、今日は栄養士の友達が情報を
仕入れてきた店で、何年か前に中国から帰ってきた人が開いた
中華料理屋さんに行く。
日本の普通の食堂のたたずまいなのだけど、メニューは全部中国の
家庭料理。広東風なんとか、とか、北京風っていうのでも
なくて、お母さんがありあわせの材料でさささっと作って
出すような料理。
ほうれんそうと卵の炒め物と
中華丼のハーフサイズとスープ、デザートつきで、
600円。また晩に行って別の料理を食べてみようね、と話をした。
(今日聴いた音楽 イパネマの娘 歌 アストラット・ジルベルト
テナー・サックス スタン・ゲッツ ほか 1964年
ニューヨークにおける録音。
案外知られていないけど、この歌に出てくる、イパネマと
これまた有名なコパカバーナって場所的にはすぐ近くというか、
お隣同士みたいな場所なんだよ。)
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