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07. 01. 15

「お嬢さん」は1番バッター

もう一昨年のことになるのだけど、友達と北鎌倉を
のんびり歩いた。

その友達のひとりが1960年作品の「秋日和」を観た、というので
俺もDVDを引っ張り出してきて観た。

この作品は1960年の松竹映画全作品中で配給収入第一位だった作品とのこと。
原作は、小津さんの敬愛していた里見惇(さとみとん)の作品から。
(ちなみにこの映画の製作担当だった山内静夫は里見惇の息子)


あらすじ、は他愛もない話で
亡き友達の娘の嫁入り先を心配していた3人のオヤジたちなのだが
その未亡人(原節子)を先に再婚させないことには娘(司葉子)
は嫁に行かないだろう、ということになり、あれこれと画策をする。
そこでいろいろな感情の行き違いやら思惑がからまって事件(というほどの
大げさなものではないけど)が起こる。そんなあれこれを一本の話に仕立てたもの。
(小津さんの映画ですからね。目立ったストーリーなんてないのよ。笑)
その中で原節子の娘という設定で出ていた司葉子、は母親の再婚話に「汚らわしい」とか
「嫌よ」と嫌悪感を示す。そしてそのことを同僚の百合子(岡田茉莉子)に話をする。
百合子は自分の父親が再婚して実家に継母(桜むつ子)がいる
境遇なので、全然驚かない。「そんなものよ。」「なにさ赤ん坊みたいに」などと言う。


1960年の司葉子の演じた娘は母親の再婚話を汚らわしい、というのだけど、
実はこの問題って、2007年の今も変わらない大きな問題だったりする。
みんな長生きになったから、
「熟年世代の再婚」っていう話がある一方で、その結婚について
息子・娘の同意が得られないのでその結婚がなかなか成立しない、
という話を先日もニュースで言っているの聴いた。
だから決して1960年の問題ではない。
人の親の再婚は「いいじゃないの。当人がよければ。」なんて理解を
示すのだけど、話が自分の親になると「嫌よ。」っていう人が今だって結構多いのだ。


映画の中では、後半に行くにしたがってヒロインの司葉子より同僚役の岡田茉莉子
のほうが断然いきいきとして見えてくる。
小津監督は岡田茉莉子を「お嬢さん」と呼んだ。
もちろん戦前の小津映画に出ていた岡田時彦の娘だったし、
普通の意味としてのお嬢さんとしての品もあったからだろう。
ある時に岡田茉莉子は小津監督に自分の位置について訊いてみたらしい。
すると小津さんは野球の打順にたとえて「お嬢さんは1番バッターだよ」
と言ったとのこと。で、「4番が杉村(春子)さん。」この訊いた時期は
すでに小津さんの晩年だったので、こういうことになったらしい。
小津組で助監督もつとめた作家の高橋治は「原節子が5番だろう。」と想定した。
問題は、小津映画晩年の作品で2番と3番バッターがいなかったのだ、と。


それはともかく。
小津さんの映画は、いつも
見てて着物の趣味もいいし、洋服もおしゃれだなぁ、って思う。
あれを昭和30年代の典型的な、、っていうのはウソだと思う。
典型なんかじゃない。相当に都会的で、オシャレな部分の
エッセンスだけを取り出したら、という但し書きが俺は絶対いると思う。

(ちなみに映画のクレジットには入ってないけど、洋服のデザイン担当で
森英恵も入っていた。)

小津さんの映画に、表だった破調はあまり出てこない。

秋日和だって撮影担当の厚田雄春が、あまりにも同じようなどうでもいいような
せりふが続くので「秋日和」の台本の「日」に鉛筆で縦棒をつけて「田」に
してしまった「あきたわ=飽たわ」くらい。だからぼーっと観ている分には
「よくもまぁこんな退屈な映画」と思うかもしれない。

だけど自分が次第に30代になって40代になって、自分の家庭の状況が
変化をしてきたときに、小津さんの映画のあらすじを思い出して愕然とする
ということになる。あまりに自分の今の問題と酷似しているではないか。
そうなったときに小津さんの映画のせりふが重く感じられるようになる。
後になってその映画は自分の中にずしん、と響いてくることになる。
俺もね、大学の時なんか何だあれは、と思った。
だけど、いろいろな経験をしたり人との別れを経験してきた今になると
映画の中のせりふがすごく重い意味を持って聞こえてくることが出てきてね。


後々になって人の足下を平気で掬うようなことをするんだから。
ホントに罪作りな作品だな、と観てて思う。


はてさて。
さきほど病院から帰る。
さすがに退院してすぐの人間に主治医も聞くこともあまりないようで、
本日は採血のみ。


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Comments

着実にバントができる2番バッターは桜むつ子あたりでしょうか?浦辺粂子も捨てがたいですが・・・。
「秋日和」での岡田茉莉子のパーティードレス、素敵ですよね。のちに吉田喜重作品でも森英恵のスタイリッシュな衣装を見事に着こなしていますし、岡田茉莉子自身にセンスがあるんだと思います。

Posted by: yasu | 07. 01. 15 at 오후 11:17

----yasuくん
 戦前の小津作品だったら、浦辺さんでしょうかね。俺もそう
思います。桜むつ子さん、監督は違いますけど、木下恵介監督の
「喜びも悲しみも幾歳月」で、長年夫婦二人だけの灯台勤務を
続けてきたために精神に異常をきたしてしまった奥さんの役を
それはそれはうまく演じておられました。俺、見てて涙が出ました。
そうそう。岡田茉莉子の青いパーティドレス、花の帽子もついて
素敵でした。それからモノトーンで上下になった大胆なスーツも。
あれも俺、いいなぁ、って思いました。

Posted by: 謙介 | 07. 01. 15 at 오후 11:46

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