カントリー・ライフ
もう少し大家さんのところの話を。
大家さんのところは山羊を飼っている。
2頭の白い山羊。
大家さんは言う。
よく童話で山羊はメエメエと啼くことになっているけど
どうやったらあんなかわいらしく聞こえるのか、
不思議で仕方がない、と。
どんな鳴き声なんですか、と聞いたら
メエメエなんてかわいらしいものじゃないのよ。べぇぇぇぇぇぇって
それはそれはすごいの、と憎々しげに言った。
それから何年か経ったある日。家賃を持っていたときに
たまたまその山羊の鳴く声を聞いた。
本当にべええええええという感じだった。
いやむしろ後の「え」のほうに濁点でもつけたらいいんじゃないか、
と思うくらいの鳴き声。
たしかにメエメエやぎさん、という感じではないが。
それから別の時にまた大家さんは言った。
「山羊って強情な動物よ。ホンマ腹立つこと多いわ。」とのたまう。
「強情なんですか? 山羊って、、。」
向こうにいる山羊はそしらぬ顔で足下の草を食べている。
そういうと大家さんは
「そ、山羊は強情。 大体ね、鹿だの山羊だの見てくれは
かわらしげな動物だけど、ああいうのに限って、実際は強情なんだから。」
(ずばりと言い切る大家さん)
まぁ確かに奈良公園の鹿は観光客ずれしていて、凶暴ですらあるけれども。
でも家畜として飼ってるんですよね。と俺が尋ねる。少しは信愛の情とかは
ないのかな?
「山羊の乳を取るためでね。うちの孫、アレルギーで牛乳飲めんから。」なんだとか。
うしさんの代理でやぎさん。
ねぇ。
折角家で飼っているわけだし、、だったら、もうちょっと愛情を持って接したら? とも
思ったけど。(笑)
この山羊の名前ってあるんですか?
そんなものつけてない。 とにべもないお返事。
俺に対しては、いつも何彼と気をくばってくれるあの大家さんが
こうまで言うと、やっぱり山羊って強情なの? って思ったりもする。
大体、俺が今のところを引っ越さないのは、大家さんのおかげなのだ。
いつも家賃を持っていくとき、大家さんからは
いろいろな話を聞いたり、こちらも近況報告したりする。
時々話し込んで1時間くらい庭先で世間話したり。
大家さんの農作業の話って、すごく
おもしろいし、俺にもやさしい気遣いをしてくれるのに。
そんないい大家さんなんだけど、、。
でも「山羊は強情。」
大家さんに言わせると、(家畜のくせに) 犬のようになつかないらしい。
山羊は山羊。人間は人間なんだそうな。
「でも餌はちゃんとちょうだいよね。ふん。」 そんな山羊の態度が嫌なんだ、って。
またある日家賃を納めに行ったら、
「オクラ」と「キウイフルーツ」を山ほどくれた。両方とも自分ちの畑で作ってる。
キウイはまだすっぱいからビニール袋に林檎と一緒に入れて密封して
しばらく置いておいてね、って。
だけどキウイもオクラも実際作ると大変なんだって。
というのが、オクラもキウイも表面に細かい毛が生えているよね。
たまに買うとか、調理する程度だったらそんなことならないんだけど
生産して出荷するとなると大量になる。
そうするとオクラとかキウイの表面に生えている毛を大量に吸い込むことに
なって、それが喘息の発作を誘発するんだそうな。
キウイフルーツで喘息、なんて聞いたことなかった。
スーパーで売ってるものを、かごに入れて買ってるだけでは
見えてこないことって、いっぱいあるよなぁ、って、
大家さんと話をするたびに、気づかされることが多々ある。
帰って来ていた○間書院の広報誌を読む。
巻頭特集「西鶴と浮世草子の研究」
なにげにぱらぱらみているとその中に
恩師が入っているので、何を話しているかと、
あわててていねいに見る。
するとこんなことを言うてはりまして。
講義中に取り上げた話(西鶴の浮世草子)
のうちからひとつを選んで現代小説に書き換えて
もらうというレポートを出題したことがありますが
どのレポートも実に見事な現代小説になって
いるので驚きました。
だって。
なかなか楽しげなことをやってはるんですね。センセイ。(笑)
いいなー。
(今日聴いた曲 道頓堀行進曲 内海一郎 原盤は1929版
マスタリングによる復刻盤 音源はCD 発行年未詳)
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Comments
なんだか、謙介さんの所の大家さん、沢山いろいろくれるんでねすね。
いい大家さんですね。(^_^)
僕も今からもう20年近く前?東京で家さんに毎月家賃を納めに行ってました。そこは、6年くらい住んで引っ越しちゃったけど。いい、大家さんでしたよ。
その大家さんの家のお庭に僕の部屋の小さなベランダが面していたのですがある日、朝は、すごいよいお天気だったので、雨などふらないだろうと思い(天気予報も一日晴れでした)布団をほしていったら、雨が嘘のように降って、仕事からかえったら布団がびしょ濡れ。
そしたら、大家さんがドアの前に張り紙してあって、「布団がぬれたと思うので、もしよかったらお貸ししますよ。」って
なんでも定年を迎えた大家さんのご主人が、お庭いじりしながら僕を、何時もきにかけてくれていたみたいで大家さんの奥さんに、手紙書いて張り紙しておけって言ってくれたそうです。パンツの柄まで見られていたけど。笑。
駒場東大前駅ちかくの、とってもいい大家さんでした、思い出しました。
今、ほとんど家賃って銀行振り込みで、そっけないけど、大家さんに毎月、家賃持って行くのって、交流が出来ていいかもですね。
山羊って、鳴き声すごそうですよね。目とかも近くで見ると恐いですよね。(^_^)b
Posted by: holly | 06. 11. 22 PM 4:22
----hollyくん
そうなんです。(笑) 家賃を納めに行ったときに
直接「ほら、食べて。」ってくれるときもあるし、帰ってきたら
ドアの横に「ソラマメ」とか「茄子」の入った袋がどーんと
置いてあったりすることもあります。 いい大家さんです。(笑)
いや、物をくれるから、っていうんじゃなくて、
ホント、人柄が暖かい方なんですよ。
昔からこの辺の地主さんで土地も持ってるし、お金持ち
なんですけど、いつもニコニコと優しく接してくれたり
何彼と心配してくれます。
ずっと以前、引越しをしないといけなくなって、
建物を探していたとき、何軒めかで、その建物と
大家さんに会って。建物より大家さんに惹かれて借りた
っていう部分もあります。(笑)
山羊は恐いです。
優しげ、というイメージがありますけど。(笑)
Posted by: 謙介 | 06. 11. 22 PM 7:52