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06. 11. 30

病気のこころがまえ

2週間ほど前に、仕事場で、一緒に仕事をしている
女の人から相談を受けた。

「私、今度リンパ節にがんができたので、県立病院で手術することに
なりました。」とのこと。近いうちに入院して、手術をして
12月のはじめに退院という日程だそう。「それでね、謙介に質問
なんだけど、がんになったときに、どんなふうに過ごしたらいい?」っていうの。


見事な直球。(笑)


そんなこと突然聞かれたってこちらも困る。
うーん、、としばらく考えたんだけど。
「どう、過ごすか、っていうことより、あなたがさ、
一番何がしたいか、っていうことだと思うのよ、俺。 
がんだから、って言われて医者から止められたり、注意
しなきゃなんないことはあるとは思うけどさ。
だけど、基本的に自分がしたい、これはやりたい、
って思ってることを優先させたらいいんじゃないかなぁ。」
って話した。

「思ったらすぐ実行する。俺、病気になって
一番変ったのは、今できることを一番に優先させることかな。
後になって、って言って、いつかそのうち、、なんて
言ってたら、病状が急変して、できなくなったらおしまいだもん。
俺ね、去年から今年はできるだけ友達に会いたい
っていうテーマ決めてたのよ。」

「テーマ? 」

「そうそう。テーマ。今年のテーマ。友達に会って
話をしよう、と。それが今年前半の治療で体調が極度に悪く
なってしまって、白血球の数がものすごく低下して、
だから感染防止っていうことで移動はダメ、って言われるし
人に会うなんてもってのほか、って言われてしまったんだ。
それに、人に会うって、やっぱり相手の都合があるからさ、
まずは相手の都合、っていうのがあるけど、体調とか都合が
つくのだったら、うじうじ考えていないでさっさと行って
会ってきたほうが、そりゃ体は少し疲れても精神的に
すごくいい影響があるんじゃないか、って思う。」っていうような話をした。
「だからやりたいことをそのうち、って
待っててダメになったら、その方が嫌だしさ。
今、あなたは何かしたいことってある、でしょ? 」

「もちろん。」

「それから病気になったとしてもできる、ってことだったら、
少々無理かな、って思ってもとにかく誰かに助けてもらってでも、
やることだと思う。いつか、治ったら、なんて言ってて、機会とか
とっかかりを見失ってしまうのだったら、たとえ少しでもいいから、
その入り口で何かやってた方がずっといいような気がする。いや、
死んじゃう、っていうんじゃなくて、やろう! っていう気持ちって
病気が治ったら、さっと消えてしまうことだってあるし。いつか
そのうち、、が、とうとう気持ちがそっちにいかないまま何年も、、
っていうことだってあるでしょ。」と、まぁそんな話をした。

そんな話をした翌週、彼女は入院した。
それから検査、手術。

今日は仕事が終わってから彼女のお見舞いに行く。
手術は成功して、来週中には退院とのこと。彼女は病室にコンピュータ
を持ち込んで、文章を打っていた。顔色もよさげ。
「来週退院します。」とのこと。よかったですね、と話をして、
早々に失礼する。よかったよかった。


(今日聴いた音楽 アントン・ドヴォルザーク作曲 交響曲第8番
 ト長調 作品88 ラファエル・クーベリック指揮
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1966年6月 ベルリン
 における録音 音源はドイチェ・グラモフォンレコード)


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